Ich gehör nur mir!

好きな舞台を好きなだけ。わたしの観劇ライフはわたしだけのもの!

【2019/9/1】パリのアメリカ人@雷に打たれたみたいな衝撃

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『パリのアメリカ人』名古屋公演初日!

開幕直後にオーブで観て以来の2度目。最初は正直全然しっくり来なかった作品なのですが笑、今回雷に打たれたみたいな衝撃を受けました。

 

この作品に対するわたしの印象が最も変わった要因、ジェリーとリズのパ・ド・ドゥ。

過去に縛られたままだったリズの心が解き放たれたのを感じて鳥肌が立った。石橋さんのリズは、なんて魅力的な表情で踊るんだろう。

戦争の傷を負いながらも前向きで明るくて陽気なジェリーが、リズの心に光を与えてくれていた。自分らしく生きていいんだという気持ちにさせてくれた。だからきっと、あの瞬間リズの世界に現れたのはジェリーだったんだろうな。

ジェリーのダンスもしなやかで美しい。ゆるめの松島さんファンなのですが、 リチー・ベルナルド・ボビー・ウェイター長/召使い・ニールス・ミスト・フィエロ・ソンダンなど…気づけばいろいろ観ていますが、久しぶりにガッツリ踊る松島さんを堪能出来て、「それだけで最高の幸せ!」って感じ。

わたしは特に『コンタクト』が大好きで、松島さんのウェイター長が今でも最高!と思っているのですが、その時の感動を思い出した。リフトは優しさと力強さがあふれ、時にセクシーさを感じたりも。人の心を震わせるダンスを踊るってほんとうに素晴らしいし、何よりもダンスが「言葉以上に雄弁」という表現に説得力があり、はじめて観たときに感じた「なんでアンリじゃなくてジェリーなの?」という疑問を打ち消してくれた(わたしはアンリを選ぶけど!)

大好きな方です。

 

ウィールドン氏の振り付けはクラシカルさもありつつ、こうくるか!という新しさもあり、舞台転換も含めて見ていて飽きないし、舞台を彩るプロジェクションマッピングも素晴らしい。

芝居の部分も、暗い時代を乗り越え前へ進んでいくメッセージ性も今回はしっかり感じられたし、若者たちの感情の動きには共感する部分も多い。

セリフや歌詞の語感もよく練られており、面白い作品だなと改めて感じる一方で、もう少し感情に乗ったセリフ回しだったらなあと思う。真剣な場面で棒読みっぽく聞こえてしまったり。母音法のおかげでクリアに聞こえるけれど、それがたまに仇になっているような。せっかく芝居も面白いので、もう少し自然になっていったら良いのに。

あと、ガーシュウィンの曲にどれだけ親しみがあるかも大事な要素かなと。前に海外の番組映像を見たとき、 アンリが最初に歌う3拍子のアイガットリズムに笑いが起きていて、それをとても新鮮に思ったけれど、それだけ本来の曲が浸透しているから違和感が面白いのだろうな。わたしは音楽をやっていたわけでもないし、『クレイジー・フォー・ユー』くらいでしか知らないので。『クレイジー~』を観ているせいで、歌詞に対して別の違和感を感じてしまうレベル。でも、歌詞はどれもすごく好き。「パラダイスの階段」の韻の踏み方とか特に良いと思う!

 

登場人物の中ではやはりアンリが好き。リズは、自分の本当に気持ちに気づかせ、解放してくれた人を選ぶわけだけれど、わたしなら不器用でも自分をまっすぐに愛してくれる人を選ぶ。みんなに「そんなの本当に愛じゃない」と否定されまくるアンリはちょっとかわいそう。秘密もすぐアダムにばらされちゃうし。

アンリもまた、戦争の頃の自分や家族の行いを後ろめたく思い、過去に囚われたままの人だと思うけれど、両親に認められたことで過去から解き放たれて自由になれたのかなあ。アンリも自由を得られたから、リズをジェリーのもとに行かせてあげたのかなと思ってる。

 

 

東京で観た時には感じることのできなかったこの作品の魅力に気付けて本当に良かった。東京で観た時に、深く考あたりする作品じゃないけどなんて感想を書き散らしていた自分が恥ずかしい。これは人とガッツリ語り合いたい作品です!!!絶対にまた行く。